遠山郷から日本が変わる、一期一会のリーダーシップ (3) 遷宮に学ぶ知恵
さらにゆらぎは教室のなかにもあります。
下の写真は遠山藤原学校で講義をする時に使わせていただいている旧木沢小学校2階の教室です。とても趣があり、長くいても疲れない部屋です。
この写真もまた画像ソフトで輪郭と色の変化を強調してみます。輪郭にも色にもゆらぎがたくさんあります。
一方これは、東京大学教養学部(駒場)にある昔ながらの教室です。
輪郭と色の変化を強調してみると、ゆらぎは少なそうです。果たしてどちらの教室のほうが学生にとって心地よいでしょうか。
何か生命感の高い生活、勉強、仕事をしようというときに、今のような効率一点張りで、景観としても規則性ばかりでゆらぎがない空間というのは、これからの時代にはかえって「貧しい」ことかもしれません。
たとえば次のつり橋の写真を見てください。遠山郷にかかる、あるつり橋です。踏板が木でだいぶゆらいでいて、風情はありますが、ちょっと危なそうでもあります。
一方、これは遠山郷の市街地です。立派な舗装道路です。安全そうですが風情はありません。
さて、どちらがよいのでしょうか。風情はあるけれど危なそうな道、風情はないけれど安全な道。
実はこれは二律背反ではないのです。風情はあるけれど安全な道は作れるのです。すなわち、つり橋の踏板を、新しい板に交換すればよいのです。木は新品でもアスファルトに比べればゆらぎがあって風情がありますし、時間が経つと急速に色が変わっていき、風情が増します。そして強度に問題が出るぐらいまで劣化してきたら、新しい木に交換すればよいのです。
下の写真もそうです。遠山郷の熊野神社です。風情のある木の鳥居です。でも何となく倒れそうな予感がします。そうしたら、二度と倒れないようにということでコンクリや金属の鳥居にするのではなくて、また木の鳥居を建て直せばよいのです。
お宮も老朽化が進んだら、また木のお宮に建て替えればよいのです。
遠山郷にも鉄で鳥居を作ったお宮があります。ところが錆びてくると帰って風情がなくなりますし、もっと錆びると突然折れて倒れる可能性があります。
錆びる鳥居を作るくらいなら、もう少し張り込んで、石の鳥居にしたほうが風情があるかもしれません(静岡県浜松市水窪の山住神社)。
こうしてみてくると、伊勢神宮や出雲大社で定期的に遷宮をするというのは大変意味のあることだということがわかります。お宮が新調された時は新鮮な美しさがある。一方建て替え間際には成熟した美しさがある。そして建て替えることによって材木の需要が生まれて森林整備が職業として成り立つようになり、職人の技も継承され、人々は常にゆらぎのある心地よい空間に安全に住むことができる。
もし、旧木沢小学校の老朽化が進んだらどうすればよいのか、また木で立派な学校を建てればよいのです。それが、これからの時代の「豊かさ」ではないでしょうか。
(つづく)
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