新成長戦略 - 私ならこうする
みなさん、あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年末に出ました政府の新成長戦略。私ならこうやるという案を書いてみました。今年は大きな転機になりそうです。どうぞ、みなさんもますますご活躍ください。
藤原直哉 拝
新成長戦略 - 私ならこうする
1、新成長戦略の戦略目標
新成長戦略の中核となる具体的戦略目標は、「全国の地方都市を21世紀にふさわしい、自立性と持続可能性の高い都市(=仮称、21世紀再生都市)に改造再生させること」とする。
21世紀再生都市は、現在の地方都市を、環境、医療、観光など、政府の新成長戦略が言う個別分野における新しい取り組みを総合的に融合させることによって建設する。
それはまったく新しい地方都市を建設するというよりも、既存の地方都市を新しい価値観、技術、ルールで改造することによって達成される。
その過程で地方都市に関係の深い小都市や中山間地にも新たな産業や雇用が生まれ、また地方都市の再生を通じて日本全体の再生も目途がついてくる。
2、21世紀再生都市建設プロジェクトの主体
21世紀再生都市建設プロジェクトの主体は、実施地方都市ごとに設立した非政府組織(NGO)または特定非営利活動団体(NPO)とする。
この実施主体は、産学官民のヨコ型リーダーシップを駆使できるリーダーによって構成される。
そして以下に述べるような資源、資金調達が可能になった都市から、その建設が始まる。
当然のことながら、その建設にあたっては、産官学官民の垣根を取り払った行動が必要である。
そして、こうした全国のプロジェクトを統一的に調整する部門が、中央政府内部に創られるべきである。
3、21世紀再生都市建設に必要な資源の確保
21世紀再生都市の建設がコスト倒れに終わらないためには、その都市が全国、アジア、全世界に通用する競争力の高い商品やサービスを、持続的に創りだすことが必要不可欠である。今や日本が目指すものは量よりも質である。すなわち、21世紀再生都市には、質の高い確固たる特産物がなくてはならない。
こうした質の高い確固たる特産物は、地域だけでは作れない。そこで全国、全世界からその地域の特産物づくりに貢献したいと思う人や組織や技術・技能、ノウハウを集めてこなければならない。
そのためには、21世紀再生都市建設プロジェクトの実施主体と、全国、全世界の人たちが共通の土俵に立って数多く出会い、ヨコにネットワークを組んでいかなければならない。
そのためには、21世紀再生都市建設プロジェクトに参加を希望する人や組織が全国の実施主体と一堂に顔を合わせるネットワーキングの場が必要になる。
そのためには全国で最も交通の便の良い東京で、希望者全員が参加できるヨコ型リーダーシップの勉強会を開催することが、最も効果的である。なぜならば、今の日本には個別具体的な思い、技術・技能、ノウハウを持った人はたくさんいる。足りないのは、そういう人たちが一堂に融合して、ひとつのプロジェクトを創っていくための、共通のプラットフォームとなるヨコ型リーダーシップ能力である。
21世紀再生都市建設における東京の役割は、全国、アジア、全世界の人々にネットワーキングの場を提供することである。
全国の人たちが一堂に会してヨコ型リーダーシップを勉強すれば、勉強会の際に数多くの出会いがあり、ネットワークを作ることが非常に容易になる。
すなわち21世紀再生都市建設に必要な資源は、東京に全国、アジア、全世界の人たちが集まって、自然発生的に独自のネットワークを組むことによって、ヨコ型に確保されるべきである。
4、21世紀再生都市建設の時間
21世紀再生都市建設には時間が必要である。なぜならば、新たな特産物の開発には時間が必要だからである。またそれを担う人たちの教育も必要だからである。時間をかけてその地域の特徴を研究し、またその地域の人々を教育して初めて、その地域が再生し、持続的な都市が建設できるのである。
およそ、その建設に必要な時間は10年である。しかし5年である程度の形ができているべきである。
5、21世紀再生都市建設に必要な資金の確保
21世紀再生都市建設に必要な資金の確保は、間接金融を主体とするプロジェクトファイナンスの手法のよって行われる。
過去の失敗にかんがみ、市場からの直接金融に頼ったファイナンスでは10年間にわたる長期安定的な資金供給は不可能である。
また単一の金融機関で、プロジェクト全体の資金を提供することは不可能である。
したがって、政策投資銀行、郵貯銀行など、公的な性格を帯びた大規模金融機関が、他の金融機関の融資の呼び水となる模範的な融資を行うべきである。
一方実施主体は資金調達を担う金融機関と密接に協議して、(1)政府の新成長戦略に合致した投資であること、(2)10年後には利益の出る投資であること、の二つの条件を必ず確保するようにプロジェクトを策定し、実施すべきである。
当然、そうした融資のプロセスは徹底的に情報公開されて、不正が起きないようにすべきである。
6、21世紀再生都市建設の波及効果
こうしたプロジェクトは最初の1都市の実施と成功までに、非常に大きな試行錯誤が連続する。しかし1都市で成功すれば、その先は次々に全国に広がっていくと考えられる。
同時に企業や個人にとっても新たな仕事がたくさん生まれてくるはずであり、地域に新しい雇用が生まれ、過密都市東京から人口が地域に移動していくと思われる。
このプロジェクトは地域の再生を主体にしているが、その実施においては国内だけでなく、アジア、全世界から資源を導入することを妨げていない。したがって鎖国政策ではない。逆に言えば政府間の交渉で意図的に外国のシェアを確保するようなことは、プロジェクトの性格からいって不可能である。
またこのプロジェクトを実施する過程で生み出される新しい商品は、それを生みだした人や組織の自由意思において外国で売っても外国で製造してもかまわない。したがってアジア、全世界の市場も視野に入れて商品開発を行うことができる。
金融についても、プロジェクトの基本は間接金融とする。しかし限界的な部分で直接金融の利用を排除するものではない。ただ、市場特有の不安定性によってプロジェクトそのものが不安定になることは排除されなければならない。
こうしたプロジェクトは初期段階の準備の期間を除いて、財政資金を使わずに行うべきである。なぜならば、財政に頼ると利益の出る投資に仕上げるインセンティブが大きく低下するからである。
しかし行政は国も地方もさまざまな形でプロジェクトに参加すべきである。規制の改廃、新たな規制の策定、コーディネーションなどの分野である。
一方プロジェクトが成功すれば、国にも地方にも新たな税収が入ってくると期待することができる。
7、当面の対策
しかしこうしたプロジェクトを行うに当たって、あまりにも足元の景気が悪すぎるという事情がある。これを克服するためには、都市も地方も今すぐ売ってお金になるものを売るしかない。
それはゴミしかない。都市の生活ゴミ、農村漁村の木質等のバイオゴミをとにかく資源にして国内外に売ることができる体制を、大至急作るべきである。
そのためにはゴミに関する規制の改廃、技術開発や商品化への迅速な体制作りを中央政府が直営で指揮して、全国の関係者の能力を一気に最大限融合させ、日本中に「ゴミ特需」という言葉が広がるぐらい、ゴミの利用で経済を活性化させるべきである。
以上
« 今年も大変お世話になりました | トップページ | 参考にお読みください »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 講演会がスタートします(2)(2010.01.10)
- 講演会がスタートします(3)(2010.01.10)
- 講演会がスタートします(1)(2010.01.10)
- 参考にお読みください(2010.01.02)
- 新成長戦略 - 私ならこうする(2010.01.01)
あけましておめでとうございます
5、21世紀再生都市建設に必要な資金の確保
についてですが、金融の出し手をプロジェクトのメンバーに加えることが必要と思います。
二つの効果が期待され、一つは出し手責任の明確化。昨今のユダヤ金融は歴史が証明しているように膨張しないと破綻する経済を前提にしています。イスラム金融的な投資手法の金融で出し手責任を明確にすることが必要でしょう。
二つ目は、金融と社会の現場の総合理解を深める効果が期待できます。金勘定は出来ても現場の様子が全く解らないようでは与信能力も衰退の一途。特に30代の若者やベテランと若者の組み合わせ。など金融機関の調査が机上の空論で現実に即していない事を時間を掛けて解消することが必要と思われます。
開発(イノベーション)についてはリスクも高くLLCの形式でプロジェクト事に固定されたメンバーも含めて責任を明確化する必要があると思います。LLCにすることで機密保持も可能になります。LLCは具体的な技術開発に向く仕組みだと思います。
情報公開が基本でしょうから、金を引く(専門用語)案件は減ると思いますが、技術開発については専門性が必要になるのでLLCと言う縛りが必要になると思います。現実の話、研究開発でも金を引く事が多く本当に必要な所に資金が回っているとは思えません。
年末に前代未聞の問題を相談されました。専門家も少ない分野なので既存製品が無いことも確認しました。技術的にも21世紀の開発が必要な時期にさしかかっているようです。(基礎技術は沢山あります)
日本は市場性のない物でも開発保持している必要が在ると思います。日本の鉱物資源は標本箱と言われるほど多種多様な物が産出されます(量は少ない)神の体を借りているから何でもあるのでは?で、在れば技術も何でもある必要があると感じます。
世界各国から日本へ技術・技能を探しに来る(一部では行われています)それが安全保障となり覇権のように働くのではないかと思います。
投稿: kazu | 2010年1月 2日 (土) 15時11分
kazuさん、こんにちは。いつもありがとうございます。まったくおっしゃるとおりだと思います。
金融機関もプロジェクトに参加してもらわないとなりませんね。LLCも使えると思います。そして金融機関の人間を本当によく教育しないといけませんね。すくなくとも財務諸表を自分の力で読み書きできるようにして、経営も理解させないとなりませんね。
おっしゃるように日本は量は少ないですが非常に資源の豊富な国です。少量多品種・高品質にはそもそも適した国だと思います。その強みを生かせる国に変えていけばいいですね。ありがとうございます。
どうぞますますご活躍ください。
藤原直哉 拝
投稿: 藤原直哉 | 2010年1月 2日 (土) 19時35分
藤原先生
明けましておめでとうございます。
本年も御指導を宜しくお願い致します。
インターネット放送局で紹介のありました”観世英雄”さんの本を読ませて頂きました。
”すげー ブルーブラッド!!”とブルーブラッド教へ、気持が揺れ動きながら読み終えました。
人の世であり 時代が作る社会の仕組み 複雑怪奇です。
文末で著者の方が言っておられたことです。
”志を全うして悟り、素直と感謝の無限成長の登竜門に至る”
”命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困る也。 この始末に困る人ならば、困難を共に国家の大業は成し得られるなり”
もっとも共感できたのは、
”ワイン超一流のロマネコンティのブドウの樹は、荒れ地に在り、その根は地下に岩を割り貫き、栄養豊かな地下水を吸い上げて生息するという。 こんな人間たちに出会う事が人生の喜びである。”
凄いです。
先生の新成長戦略も読ませて頂きました。
順を追った緻密さが凄いです。
要点を突いた広範囲の解説なので、私の想像力ではすぐにパンクしてしまいます。 ゴミへの着眼点は”なるほど”と思いました。
お聞きしたい事があるのですが宜しいでしょうか?
国の経営と会社の経営では、規模以外に何が大きく違うのでしょうか?
どんな職業に似ているのでしょうか?
頭の良い良心的は方がリーダーであればすべて丸く収まるのでしょうか?
安全地帯にいると頭がぼけてしまいます。 何か問題現場に行き、慣れて学んで塗り替える作業がしたいです。
先生のおかげで社会の仕組みが少しずつ分かってきました。 どうも有難うございます。
みんながリーダー アイデアがあふれ出る楽しい社会になる事を望みます。
投稿: 儚 | 2010年1月 4日 (月) 03時59分
儚さん、こんにちは。いつもありがとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
観世英雄さんの本はよかったですか。この方、今でも国会議事堂によく行かれています。自民党時代には首相の訪ロの地ならしをよくやっておられました。世の中、隠れたとことにすごい方がおられますね。
国と会社の経営の違い、いいご質問ですね。まず、役所と会社の経営の違い、これは何もないと思います。両方とも顧客満足のために何ができるかというのが経営です。両方とも同じです。よく民間だから営利をと言いますが、最近は役所ほど大胆に営利を追求する組織も珍しいと思います。一方的増税に一方的事業カット。民間ならとても顧客に受け入れられないような営利追求姿勢ですね。
しかし、国という言葉を役所ではなくて国家と言った時、国家と官庁、あるいは国家と民間の経営に違いはあるかというと、これは非常に大きな違いがあります。役所でも民間企業でも、経営は目的にかなう人だけを集めて効果的・効率的にやればいいのです。でも国家という単位でみると、そうやって働き場所の見つからない人をどうやってサポートするかという問題が出てきます。安心して失業できない社会は変化への適応力が乏しく、やがて衰退していきます。
ですから国家の運営には役所や民間企業の運営のもう一つランクの高いリーダーシップがいるのです。一人一人の国民の潜在能力を花開かせて、未来に貢献できる人を養成するという仕事です。すなわち国家の運営には、効果・効率で割り切ってはいけない部分が多いのです。
しかし、いまや国家の運営は誰もやっていません。役人は無論のこと、政治家もほとんどは役所の運営に没頭していますし、民間企業も自分のことで精いっぱいのところがほとんどです。
では国家、あるいはそのミニ版である地域の運営は誰がどうやったらいいのか?それはやる気のある人たちがあらゆる既存の組織から集まって、ヨコ型リーダーシップで手を組んでやるしかない。それがNGOでありNPOなのです。それが私の「見立て」です。
という感じです。どうぞこれからもますますご活躍ください。ありがとうございます。
藤原直哉 拝
投稿: 藤原直哉 | 2010年1月 4日 (月) 08時08分
http://blog.kita-o.com/2010/01/blog-post.html
あけましておめでとうございます。
いつも勉強させていただいております。
実は、私の地元に消えたと思っていた駅前再開発が浮上しました。昔ながらの味のある商店街の方をつぶして20メートル道路にし、風俗などがある(ある意味活気のある)商店街を歩行者天国にするらしいです。判で押したような町並再開発計画はこの不景気に納得いかないです。 大阪にお越しの節はご連絡くだされば案内いたします。
投稿: さいき | 2010年1月 7日 (木) 12時27分
さいきさん、こんにちは。いつもありがとうございます。
そうですか。情けない開発をやりますね。地方の時代が来ているのですから、地方の政治家は本当にもっと大きな視線で仕事をしてもらわないといけませんね。またいろいろと教えてください。
ありがとうございます。どうぞますますご活躍ください。
藤原直哉 拝
投稿: 藤原直哉 | 2010年1月 8日 (金) 00時52分