セスナの操縦は、実は簡単ではない
さて、今日はX-Plane10のデフォルト機体、セスナ172SPについて考えたいと思います。
何かセスナは単発で速度も遅いから最も操縦が容易で、フライトシミュレーターでも最初に飛ばす機体はセスナが良いのではと考えておられる方もおられるかもしれませんが、実はセスナの操縦は、決して簡単ではありません。
一番簡単に飛び回ってみたいのであれば、General Aviation にあるCirrus TheJet C4をお勧めします。
操縦席の右下に赤い四角が2つあります。右側の四角の中に赤い字が見えます。これがパーキングブレーキです。これをクリックするとパーキングブレーキが解除されます。
左側の四角の中がフラップの表示です。フラップを一段下げます。
これでスロットルを全開にするとやがて離陸します。X-Plane10で外を見ながら自由自在に離陸し、飛んで、着陸したいのであれば、この機体が一番簡単で楽しいと思います。ジェット機ですから高く上がれますし、速いですし。
ではセスナのお話です。まずFSXと違ってX-Plane10では特にプロペラ機に働く力をFSXよりはるかにリアルに再現しています。そのためプロペラ機は、ラダーペダルがないとなかなか難しいと思います。
たとえば市場ではこんなラダーペダルが売られています。
ではセスナをとにかく一番簡単に飛ばすことを考えてみましょう。空港に、エンジンをかけた状態でセスナを呼び出します。この例では空港コードCYCW、カナダのブリティッシュコロンビア州にあるチリワック空港です。大変風光明美なところです。
天気はCAVOK(キャブオーケー)、気圧は29.92、風はなしに設定します。
セスナを呼び出すと最初はこんな感じです。まだ計器の準備が整っていません。下のほうの赤い四角のなかにある赤いバーが隠れ、上の赤い四角のなかの表示が消えるまで待ちます。
消えたらさらに次の赤い四角のなかをクリックします。これがパーキングブレーキの解除です。
そしてこの状態で離陸できます。
さて、ではこの状態でいきなりスロットルを全開にしてみましょう。操縦かんとペダルには触れません。操縦かん、ペダルから手足を離した状態です。
あらあら、機体はいきなり左に逸れはじめました。
どんどん逸れていって滑走路からはみ出してしまいました。
仕方がないのでスロットルを戻してブレーキをかけて機を止めます。こんな航跡になっていました。
実はこれで正常なのです。セスナのプロペラは操縦席から見て右回りに回転運動をしています。そのためエンジンの力が強いほど機体に力が働いて左に逸れ、また上空では左に旋回しようとするのです。
そこでいきなりエンジンをアイドルから全開にする離陸の時には、急に機体が左に逸れ、左に旋回する力が働きます。
したがってセスナを滑走路からまっすぐ離陸させるにはペダルの右足を踏んで機体が左に逸れるのを止め、離陸、上昇時には操縦かんを右に当てて機体が左に旋回しないようにするのです。
では実際に滑走路上でペダルの右足を踏んで機体をまっすぐにしながら離陸してみます。
外から見るとラダーが確かに少し右に振れています。
しかしシミュレーターではペダルに働く力はスプリングの力だけです。そのためたいていはラダーを踏みすぎてしまい、機体が左右に逆に不安定に振れてしまうことがよくあります。ラダーを適量踏んで機体をまっすぐ離陸滑走させるにはちょっと練習が必要です。
左に逸れたらちょっと右足を踏んで機首を右に戻し、いったん右足は離す。再び左に逸れたらもう一度右足を踏む、こんな感じでやったほうがうまくまっすぐ走ると思います。
このセスナの離陸速度は55ノットです。55ノットになったら操縦かんをゆっくり引きます。55ノットになるのにさほど時間はかかりません。のんびりしているとあっという間に55ノットを過ぎてしまいます。エンジンを全開にしたらよく速度計を見て、55ノットになったらすかさずジワッと操縦かんを引きます。
そして宙に浮いたらペダルは元に戻します。シミュレーターでは上空でペダルを踏むのはとても難しいです。かえって機体が不安定になることが多いですから、上空ではペダルは使わないほうが楽です。ペダルを使わず、操縦かんで制御したほうがずっと楽です。
そして離陸します。すると今度は左に旋回しようとします。操縦かんから手を離しているとこうやって左に回ろうとします。ですから操縦かんを右に当てながら、左に旋回しないように上昇します。
滑走路から離陸したら上昇します。上昇速度はいくつかのパターンがありますが、今回はフラップも使いませんし、70ノットで上がっていくとよいと思います。55ノットで空に浮かんだら70ノットまで加速します。
下の写真で速度は70ノットです。方位は滑走路の方位を維持しています。そのためには操縦かんを右に当てて機体が左に旋回しないようにします。下の四角に方位が出ていますから、このように前が見えなくても、この方位がずれないように操縦かんを右に当ててまっすぐ飛びます。
さて、ここで一番大事なことをお話ししないといけません。上昇、降下時の速度の調整はどうやるかです。
基本的にプロペラ機では、上昇、降下時の速度の調整は操縦かんで行うのです!
すなわち上昇、降下時のエンジンの出力は基本的に一定にしておき、
速度を上げたいときー>操縦かんを押す
速度を下げたいときー>操縦かんを引く
という操作を行います。ぜひこの練習をしてみてください。速度がスーッと下がってきたら、操縦かんを少し前に押します。すると上昇でも降下でも機首が下がり、速度が上がります。
反対に速度がスーッと上がってきたら、操縦かんを少し後ろに引きます。すると上昇でも降下でも機首が上がり、速度が下がります。
操縦かんを押したり引いたりして速度を下げたり上げたりする、これが速度調整の基本です。
上昇速度が70ノットであれば、70ノットよりも速度が低ければ操縦かんを押し、高ければ引きます。そして常に速度計の針が70ノットになるように押し引きの調整ができればバッチリです。
さて今度は上昇旋回です。旋回は25度機体を傾けて旋回します。上段まん中の計器には上に目盛りが振ってあります。ひとつが10度です。ですから25度なら2目盛り半です。2目盛り半傾けると25度です。
そしてここで大切なことが速度を維持しながら旋回することです。
飛行機を傾けても操縦かんを押したり引いたりして速度が一定になるように飛びます。これもちょっと練習が必要だと思います。
では上昇が終わりました。これから巡航に移ります。操縦かんを押して下段右側の昇降計がゼロになるようにします。すると上段左上、速度が上がります。現在まだフルスロットルです。
減速するときはスロットルを戻します。すると機首が下がろうとしますので操縦かんを引きながら昇降計の針がゼロから動かないように、高度が下がるのを止めます。すると速度が下がります。
では次に降下です。降下は最適な速度が68ノットです。エンジンはアイドルまで絞り、68ノットになるように操縦かんを押したり引いたりします。
そしてこれが降下しながらの旋回です。同じように速度を維持しながら旋回します。
では着陸です。たとえば、こんな感じで滑走路が見えたとします。こういうときは滑走路の端に直接行こうとしないで、その延長線上に乗るように飛びます。
そして地面に着地するときの速度は45ノットです。フラップは2段、あるいは3段下して着陸します。X-Plane10のこのセスナが着陸態勢で失速する速度は45ノットです。
ここでもうひとつ。セスナは着地するときには失速して着地させます!
ここが普通我々が乗る大型旅客機の着陸と大きく違うところで、セスナでは滑走の上、数十センチのところで失速させて、滑走路に機体が落ちるようにして着地させるのです。
セスナには失速警報がついています。ピーという音です。ですから接地の時にピーと鳴るのが正しい接地なのです。
実際に45ノットはかなり低く感じる速度です。下の写真がその45ノットです。
高さ数十センチのところから失速して着地するとスムーズに飛行機は滑走路上を走り、止まります。
よくセスナの着陸のとき、滑走路上で機体が蛙飛びのように何度も跳ねることがあります。これはよほど高いところから落として着地したのでなければ、着地する速度が速すぎて機体が滑走路上でバウンドしてしまって起きる現象です。
すなわち着地速度が速いとセスナはおとなしく着地しないのです。スムーズに降りたつもりなのにセスナが滑走路で跳ねるときは速度が速すぎるのです。45ノットまで減速してから着地してみてください。
(おわり)
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はじめまして。X-PLANE初心者ですが、セスナの操縦がうまくいかなくて困っていました。大変役立つ情報、ありがとうございます、ラダーペダルを購入して離陸がスムーズになりました。あとは、この機材でのオートパイロットや無線航法がいまいち設定できずに往生しています、是非パネル操作の基本等をご教授いただきたいものです。
投稿: sangaimatsu | 2014年4月22日 (火) 08時00分
sangaimatsuさん、こんにちは。セスナはなかなか奥の深い機体です。
ブログを書きましたのでどうぞご覧ください。
投稿: 藤原直哉 | 2014年4月23日 (水) 07時16分
FSX 二年目、Xplane10 三日目の
新参者です。
今まで欲しくてもなかなか得られなかった情報を実に分かりやすく教えていただき、ありがとうございます。
昨夜たまたま降り立った鳥取空港でさっそく練習してみます。
投稿: 飛行オヤジ | 2015年10月27日 (火) 09時26分
CESSNA 172SPのエンジン始動方法を教えてくだい。
投稿: | 2016年12月 6日 (火) 15時06分
こんにちは。
燃料は十分入っていて、標高は海面近くで、特に寒くもないとします。
まずパーキングブレーキを掛けます。ミクスチャー=赤い大きなつまみを一番前に押し込みます。スロットル=黒い大きなつまみを一番手前に引きます。
前面パネル左下のスターターを一番右のスタートの位置までクリックして持って行きます。これでエンジンがかかるはずです。
これでかからなければ少しスロットルを前に出してみます。それでもだめなら赤い小さなつまみ、チョークを引き、燃料ポンプもオンにします。
投稿: 藤原直哉 | 2016年12月 6日 (火) 17時20分